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東京高等裁判所 平成9年(行ケ)165号 判決

群馬県新田郡新田町大字反町568

原告

鈴木雅彦

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官

伊佐山建志

指定代理人

浅野長彦

黒瀬雅一

田中弘満

廣田米男

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

特許庁が平成7年審判第15617号事件について平成9年5月16日にした審決を取り消す。

2  被告

主文と同旨

第1  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、平成4年7月29日、考案の名称を「脱着可能な自動車のボディー」とする考案について実用新案登録出願(平成4年実用新案登録願第63507号。以下この考案を「本願考案」という。)をしたが、平成7年6月13日に拒絶査定を受けたので、同年7月19日に拒絶査定不服の審判を請求した。特許庁は、これを平成7年審判第15617号事件として審理し、平成9年5月16日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、同年6月18日に原告にその謄本を送達した。

2  本願考案の実用新案登録請求の範囲

「運転座席部、後部座席部、トランク部(1)、ボンネット、フロントフェインダーの(2)、シャーシーにエンジン、ミッション、デフを取り付けた床部(3)を脱着可能にした自動車。」

(別紙図面(1)参照)

3  審決の理由

(1)  本願考案の実用新案登録請求の範囲は、前項記載のとおりである。

(2)  引用例の記載(別紙図面(2)参照)

実願昭62-201001号(実開平1-104876号)のマイクロフィルム(甲第4号証。以下「甲第4号証刊行物」という。)の第5図と1頁15行ないし2頁12行に記載された自動車は、運転座席部、後部座席部、トランク部、ボンネット、フロントフェインダーからなるボディーと、シャーシー、エンジン、ミッション、デフ、床部を有していると推定できる。

また、シャーシーには、ボディーが脱着可能な構成が記載されている。

以上によれば、甲第4号証刊行物には、「運転座席部、後部座席部、トランク部、ボンネット、フロントフェインダーからなるボディーと、シャーシー、エンジン、ミッション、デフと、シャーシーにボディーを脱着可能にした自動車。」が記載されているものと認められる。

(3)  対比

本願考案と甲第4号証刊行物記載の考案とを対比すると、分割、脱着構成が異なっている。

(4)  相違点についての判断

機械の各部品をいかに分割し、いかに組み合わせるかは、自動車のような大量生産品において、設計的事項(必要があれば、昭和35年6月15日共立出版発行、機械設計ハンドブック編集委員会編の「機械設計ハンドブック」(初版6刷)1-2頁11行ないし19行参照。以下「甲第5号証刊行物」という。)である。

そうすると、甲第4号証刊行物記載の考案にかかる設計的事項を適用して、本願考案のように構成することは、当業者がきわめて容易に想到できたものである。

(5)  結論

したがって、本願考案は、その出願前に日本国内において頒布された甲第4号証刊行物記載の考案に基づいて、その出願前その技術の分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に考案することができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができない。

4  審決を取り消すべき事由

審決の理由のうち(1)ないし(3)は認め、(4)及び(5)は争う。

審決は、本願考案は甲第4号証刊行物記載の考案と目的を異にしているのに、これを看過し、また、第5号証刊行物記載のものは、機械設計の一般論を示すに止まるものであって、本願考案と目的を異にするものであるにもかかわらず、本願考案は、甲第4号証刊行物記載の考案からきわめて容易に想到できたものであると誤った結論を導いたものであるから、違法であって、取り消されるべきである。その理由は、次のとおりである。

(1)  本願考案は、(イ)自動車のボディー部の破損だけでは廃車しなくてもよい、(ロ)自動車のモデルチェンジ時期に、ユーザーが自由に部分交換ができ、金銭的負担が少なくなる、(ハ)利用価値がある部分を廃却しなくてもよい、(ニ)モデルチェンジの際、部分的にモデルチェンジができる、(ホ)モデルチェンジの際、自動車製造労働者の時間的ゆとりができ、自動車メーカーも労働者に支払う人件費を削減することができる、といったユーザーの有益的効果をも考慮した考案である。また、本願考案は、分割生産されている技術、共通した接触面を活用する技術、脱着可能な方法で固定できる技術を組み合せることにより、自動車という商品の進歩性に寄与するものである。更に、本願考案は、利用価値の向上を目的とした進歩性のある考案ということもできる。

一方、甲第4号証刊行物記載の考案は、「本考案の目的は、金属表面相互の接触による各種の不都合を無くし、しかも、高周波の振動の吸収と操縦安定性の維持を同時に可能にすることである。」(4頁7行ないし10行)と記載されているとおりのもので、製造においての品質の向上を目的とした考案である。

このように、本願考案は、甲第4号証刊行物記載の考案とはその目的が相違しているのに、審決は、この相違点を看過している。

(2)  審決は、甲第5号証刊行物を挙げて、機械の各部品をいかに分割し、いかに組み合わせるかは、自動車のような大量生産品において設計的事項である旨認定しているが、甲第5号証刊行物は、〈1〉事業としての製造品質、〈2〉事業としての製造コスト、〈3〉上記〈1〉、〈2〉を満たすための設計を考慮のうえ、製造事業者のためにいかに経済的に生産するかという一般論を開示しているものであって、本願考案とは目的を異にするものである。

被告は、一般に、自動車の車体は、運転座席部、後部座席部、トランク部、ボンネット、フロントフェンダー、シャシー等が分割されてプレス成型等で製造され、組立ラインにおいて溶接されたり、ボルト、ナット等で組み合わせられていること、さらに、エンジン、ミッション、デフはそれぞれ別個に組み合わせられたものがボルト、ナットによってシャーシー(床部)に取り付けられることは、本願出願前に自動車の技術分野において周知の技術である旨主張し、その証拠として乙第1号証を提出している。

しかしながら、乙第1号証記載の技術は、同号証に、「フレーム構造の場合、図2-21に示すようにほとんどの車がフロント・ボデーの全部品をボルト、ナットでメーン・ボデーに組付ける方式をとっている」(9-28頁左欄12行ないし14行)、「車体工場および塗装工場をフロント・ボデーのない短かい車体で流すことができる」(9-28頁左欄15行及び16行)、「フレームレス構造の場合は図2-22に示すようにフロント・フェンダ、フードなど外板部品のみを取りはずし可能にし、他の構造物はメーン・ボデーに溶接しているが、まれにはフロント・フェンダも溶接した車、あるいは逆にすべての構造物を取りはずし可能にした車もある。」(9-28頁右欄1行ないし5行)、「ついで設計上注意すべき事項を列記する。」(9-28頁右欄8行)、「スポット溶接はんだ仕上げの方法はプレス成形の問題が少なく、かつ作業性がいいが、はんだが高価なため原価高となる。」(9-28頁右欄14行ないし16行)、「中央のヘリアーク後やすり仕上げはプレス品の切口を合わせるのがむずかしく、仕上げに大きな工数が必要となる。」(9-28頁右欄16行ないし18行)と記載されているように、製造における生産性の向上のためにボルト、ナットを使用し、メーンボディーに組み付け、あるいは、製造においての原価低減と製造においての工数低減という目的のためにボルト、ナットを使用し、取り外し可能にしたというものである。

したがって、乙第1号証記載の技術は、本願考案とは目的、工法を異にするものである。

(3)  以上のとおり、本願考案は、甲第4号証刊行物記載の考案からきわめて容易に考案をすることができたものとはいえないから、審決の判断は誤っており、取り消されるべきである。

第3  請求の原因に対する被告の認否及び反論

1  請求の原因1ないし3は認め、同4は争う。審決の認定判断は正当であって、審決に原告主張の違法はない。

2  被告の反論

(1)  甲第4号証刊行物の第5図には、本願考案の実施例を示す図3と同様、上下のフレーム1、ボディ2の板をボルト、ナットを用いて脱着する構成が記載されており、この第5図は、本願考案の実用新案登録請求の範囲の「床部(3)を脱着可能にした」構成に対応するものである。

また、一般に、フレーム、ボディー等をボルト、ナットを用いて脱着可能な構成とすると、修理、交換、再利用等の広範なニーズに対応できるから、消費者の利便性の向上に貢献する反面、ボルト、ナット等の重量が増加し、また、ボルト孔の付近の強度が低下して剛性が低下し、自動車の強度が落ちることになり、反対に、フレーム、ボディー等を溶接して脱着不可能な構成とすると、修理、交換、再利用等が困難となり、消費者の利便性に欠ける反面、ボルト・ナット等の重量が無くなるから車体が軽量化し、また、剛性が向上して強度が大きくなることは、機械の製造においてよく知られているところである。

そして、第5図において、ボルト、ナットを取り外すと、(イ)自動車のボディー部(ボディ2)の破損だけでは廃車しなくてもよい、(ロ)自動車のモデルチェンジ時期に、ユーザーが自由に部分(ボディ2、シャーシ1のいずれか)交換ができ、金銭的負担が少なくなる、(ハ)利用価値がある部分(ボディ2、シャーシ1のいずれか)を廃却しなくてもよい、(ニ)モデルチェンジの際、部分(ボディ2、シャーシ1のいずれか)的にモデルチェンジができる、(ホ)モデルチェンジの際、自動車製造労働者の時間的ゆとりができ、自動車メーカーも労働者に支払う人件費を削減することができることは明らかであって、これは、本願考案の目的と軌を一にしており、したがって、甲第4号証刊行物に記載された考案は、設計、生産のみならず、修理、交換、再利用等の広範なニーズに対応できるものである。

したがって、本願考案は、甲第4号証刊行物記載の考案とはその目的が相違しているのに、審決はこの相違点を看過しているとの原告の主張は、相当でない。

(2)  甲第5号証刊行物においては、機械生産のための設計において、一般に各部分品を分割し、また、この分割したものをいかに組み合わせるかが設計的事項として肝要であるとしており、特に大量生産される品物の場合には一層重要になるとしている。そもそも、自動車は大量生産される機械の典型例である。

また、一般に、自動車の車体は、乙第1号証にみられるように、運転座席部、後部座席部、トランク部、ボンネット、フロントフェンダー、シャシー等が分割されてプレス成型等で製造され、組立ラインにおいて溶接されたり、ボルト、ナット等で組み合わせられていること、さらに、エンジン、ミッション、デフはそれぞれ別個に組み合わせられたものがボルト、ナットによってシャーシー(床部)に取り付けられることは、本願出願前に自動車の技術分野において周知の技術である。そして、ボルト、ナットを用いて組み合わされたり、取り付けられた部材は、ボルト、ナットを緩めることにより取り外し可能となっていることは当然である。

そうすると、甲第5号証刊行物に記載される一般的な設計的事項に基づく考えを自動車の分野に適用することは、十分に可能であり、原告の主張は理由がない。

第4  証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

第1  請求の原因1ないし3は、当事者間に争いがない。

第2  甲第2号証(本願考案の実用新案登録願)及び甲第3号証(平成9年3月5日付手続補正書)によれば、本願明細書には、次の記載があることが認められる。

1  産業上の利用分野

「この考案は目動車の床部に、ボディー部を脱着可能にした技術である。」(段落番号【0001】。以下同じ)

2  従来の技術

「従来、自動車の床部にボディーをスポット溶接していた。」(【0002】)

3  考案が解決しようとする課題

「これは次のような欠点があった。(イ)自動車のボディー部の破損だけでも廃車しなければならない事もあった。(ロ)自動車のモデルチェンジ時期にエンジンの性能は劣っていないにもかかわらず、見た目(ボディーのスタイルの良さ)だけで車全体を買い替える為、ユーザーの金銭的負担が多くなっている。(ハ)利用価値がある部分を廃却している。(ニ)モデルチェンジの際、設計段階で自動車全部分の制作図面を書いている。(ホ)モデルチェンジの際、自動車製造労働者は負荷残業が増え人権費がかさむ。」(【0003】)

4  問題を解決するための手段

「シャーシーにエンジン、ミッション、デフを取り付けた床部(3)に運転座席部、後部座席部、トランク部(1)、ボンネット、フロントフェインダ(2)をスポット溶接せずに、(1)部、(2)部、(3)部を脱着可能にする。

本考案は以上のような構成によりなる自動車である。」(【0004】)

5  工法

「運転座席部、後都座席部、トランク部(1)、

ボンネット、フロントフェンダー部(2)

シャーシーにエンジン、ミッション、デフを取り付けた床部(3)

以上のように分割された自動車を運転座席部、後部座席部、トランク部(1)とシャーシーにエンジン、ミッション、デフを取り付けた床部(3)の結合部の位置を共通させる為に、接触面の共通した形状を利用し、脱着可能な方法を用いて固定する。ボンネット、フロントフェンダー部(2)とシャーシーにエンジン、ミッション、デフ、を取り付けた床部(3)の結合部の位置を共通させる為に、接触面の共通した形状を利用し、脱着可能な方法を用いて固定する。」(【0005】)

6  効果

「固定位置が共通の位置にある為に、必要に応じて各部を交換することが出来る。」(【0007】)

第3  審決を取り消すべき事由について判断する。

1  本願考案と甲第4号証刊行物記載の考案とを対比すると、分割、脱着構成が異なっていることは、原告の認めるところである。

2  審決が、本願考案と甲第4号証刊行物記載の考案との目的の相違を看過しているかどうかについて検討する。

(1)  前記第2に認定した事実によれば、従来の技術においては、自動車の床部にボディーをスポット溶接していたところ、本願考案においては、自動車を、シャーシーにエンジン、ミッション、デフを取り付けた床部(3)と、運転座席部、後部座席部、トランク部(1)と、ボンネット、フロントフェインダ(2)とに3分割し、適宜の方法で脱着可能に固定するという構成を採用することにより、必要に応じて各部を交換することができるという効果を奏するというものであることが認められる。

(2)  一方、甲第4号証刊行物の第5図には、上下のフレーム1、ボディ2の板をボルト、ナットを用いて固定している構成が記載されていることが認められる。また、発明の詳細な説明中には、「一般に、ボディとシャーシ(フレーム)が別体となっている車両においては、第5図に示すようにシャーシ側のフレーム1の上面とボディ2の下面の間にボディマウント3が介装されている。従来のボディマウントの代表的なものとしては、・・・その一つは、第6図に示すように、シャーシ側のフレーム1とボディ2の間に円筒形等の比較的単純な形状のマウンティングゴム4を介装し、このマウンティングゴム4をフレーム1の下面側の同様なマウンティングゴム5と共にボルト6によってフレーム1とボディ2に共締めするものであった。」(1頁20行ないし2頁12行)、「他の一つは、第7図に示すように、フレーム1とボディ2の間に介装するマウンティングゴム4の両端面に湾曲形状の金属板7および8を接着し、この際マウンティングゴム4の一端面の中央に予め凹部9を設けておいて金属板7と非接着の空間部10を形成し、金属板7および8の端面をボルト6を用いてフレーム1とボディ2に締付け固定するものであった。」(2頁18行ないし3頁5行)との記載があることが認められる。

上記記載によれば、甲第4号証刊行物のマウンティングゴムは、車両のボディーとシャーシー(フレーム)との間に介装され、このマウンティングゴムを介してボルトとナットによって締め付けてボディーとシャーシー(フレーム)を組み付けているのであり、そうすると、ボルトとナットの締付けを解除することによって、ボディーとシャーシー(フレーム)を分離することができることは、構造上明らかである。

(3)  以上、(1)及び(2)に認定したところによれば、本願考案は、自動車を3分割して、これらを適宜の方法で固定するという構成の脱着可能な自動車に関するものであり、甲第4号証刊行物記載の考案は、自動車を2分割して、これらをボルトとナットによって締め付けて固定するという構成の脱着可能な自動車に関するものであって、いずれも、同一の技術分野に属する事項であって、審決が説示するとおり、分割、脱着構成において相違するという点を除けば、構成は、共通しているということができる。

そして、本願考案の「固定位置が共通の位置にある為に、必要に応じて各部を交換することが出来る。」との効果は、脱着可能な自動車において上記構成を採用すれば、当然に奏する効果というべきであり、その他、予期しえない格別の効果があるということはできない。

(4)  以上によれば、甲第4号証刊行物記載の考案も本願考案と共通の目的を有するものであるから、甲第4号証刊行物を引用した審決の認定判断は相当であって、原告の主張する点をもって審決は違法であるということはできない。

3  次に、脱着可能な自動車において、どのように分割し、組み立てるかは設計的事項であるということができるかどうかについて検討する。

(1)  甲第5号証刊行物には、「設計される機械の性能に関する限り前述の通り進めるべきであるが、事業としての機械生産を考えれば、これだけで完全な設計というわけにはいかないのであって、いかにしてこれを経済的に生産できるか材料や工作の方面にわたって充分に考究しなければならない。性能が同一であっても各部分の形状、寸法の取り方によって機械加工に難易があり、これはまたできあがった製品の精度に大きな影響をおよぼすから、各部分品をいかに分割し、いかに組み合わせるかを詳細に検討し、特殊な工作機械を用いないで精密に加工できるような形状、構造に設計することが肝要であり、特に大量に生産させるべき品物であると、1個当りの生産費の差額は僅少であっても全体としての差額は非常に巨額になるから、この場合には加工費の節減は一層切実な問題である。」(1-2頁11行ないし19行)との記載があることが認められる。なお、自動車が、大量に生産される機械の典型的なものであることは、周知の事項である。

上記事実によれば、甲第5号証においては、自動車を含む大量に生産される機械製品を経済的に生産するには、構成部品の形状、寸法の取り方、分割、組み合わせの仕方を考慮することが肝要であるとの技術事項が開示されているものというべきである。

(2)  乙第1号証(1981年5月25日株式会社図書出版社発行「新編・自動車工学ハンドブック」(第8版))には、「フレーム構造の場合、図2-21に示すようにほとんどの車がフロント・ボデーの全部品をボルト、ナットでメーン・ボディーに組付ける方式をとっているが、これには車体工場および塗装工場をフロント・ボディのない短かい車体で流すことができるという大きな利点がある。」(9-28頁12行ないし16行)、「フレームレス構造の場合は図2-22に示すようにフロント・フェンダ、フードなど外板部品のみを取りはずし可能にし、他の構造物はメーン・ボディに溶接しているが、まれにはフロント・フェンダも溶接した車、あるいは逆にすべての構造物を取りはずし可能にした車もある。」(9-28頁1行ないし5行)との記載があることが認められる。

上記記載によれば、フレーム構造の自動車の場合、専ら、フロント・ボディーの全部品をボルト、ナットでメーン・ボディーに組み付ける方式をとっていること、フレームレス構造の自動車の場合には、フロント・フェンダ、フードなど外板部品のみを取外し可能にし、他の構造物は、専らメーン・ボディーに溶接していることが認められる。

(3)  以上によれば、本願考案の実用新案登録出願の当時において、自動車のように大量に生産される機械製品の生産において、車体をどのように分割し、固定するかは、自動車の車種や構造、生産技術、経費その他諸々の具体的事情を考慮して決せられるべき設計的事項であったと解するのが相当である。

(4)  そうすると、甲第4号証刊行物記載の考案から、フロント・ボディーを構成する部分について適宜の分割、組付けを選択し、本願考案の構成を導き出すことは、当業者がごく容易に想到することができたものというべきである。

(5)  以上の認定判断に反する原告の主張は、採用することができない。

第3  そうすると、審決には、原告主張の違法はなく、その取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないものというべきであるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結日 平成10年10月29日)

(裁判長裁判官 清永利亮 裁判官 春日民雄 裁判官 宍戸充)

別紙図面(1)

【図1】 本考案の脱着実施例を切り欠いた図面である。

(1) 連転座席部、後部座席部、トランク部

(2) ボンネット、フロントフェインダー部

(3) シャーシーにエンジン、ミッション、デフを取り付けた床部

【図2】 本考案を利用した組立て方法を示す斜視図である。

〈省略〉

【図3】 本考案の脱着可能な方法の実施例を拡大した図面である。

〈省略〉

別紙図面(2)

〈省略〉

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